グラスの上から下へ、
パフェを食べるとは
ひとつのストーリーを味わうこと。

はじめましてPACEです Vol.05

パフェ&ジェラート ラルゴ 代表・古川雄三さん

この秋、ルクア イーレ4Fに誕生する「PACE(ペース)」は、まるでひとつの街のような、ワクワクに満ちた空間です。ぐるぐる歩き回って「ちょっと疲れたな」という時、欲しくなるのは甘いもの! 「パフェ&ジェラート ラルゴ(以下、ラルゴ)」に行ってみては? 「映え」だけではない、パフェを食べる体験まるごと、ひとつのストーリーのように楽しめる場所なのです。そんな唯一無二なパフェテリアの裏側を、代表・古川雄三さんにインタビュー。驚くべきアイデアマンぶりに企画会議も白熱し、新店が盛り上がりそうなアイデアも続々登場しました。

7月某日、一行が訪れたのは梅田駅から徒歩5分のところにある店舗「ラルゴ」。
赤い外壁がパッと目を引き、お店に入る前からワクワク感が高まります。
お店に続く階段も雰囲気抜群。
ドキドキしつつ上る、ルクアの岡森と寅屋敷。
階段を上った先、ドアを開けると、グリーンにあふれた空間が。
こちらが今回お話を伺う、株式会社イニシエート代表の古川雄三さん。
着席し、さあお話を……となったところで、寅屋敷の視線がその手元に。
「このテーブル、ガラス張りの下にお花が敷き詰められているんですね!」と寅屋敷。

古川:そうなんです! テーブルごとに違う色合いになっているんですよ。

ルクア岡森:このテーブルに座っているだけで、なんだか気持ちが華やぎますね。

古川パフェを食べるってちょっとした非日常だと思うので、食べる前から特別感を味わってほしくて

その言葉どおり、店内は特別感を演出するインテリアがそこかしこに。「エンターテインメントとしてパフェを楽しむぞ! という気持ちがより高まる気がします(笑)」と思わず笑顔になるルクアのふたり。
テンションが上がったところで取材スタート。まずはふたりから「PACE」についてのプレゼンを。
実は「PACE」の詳しいコンセプトなどを聞くのは、古川さんもこの時が初めて。
「『PACE』の由来からお話します」と岡森が切り出す。

ルクア岡森:今回のプロジェクト全体を「PACE」というテーマで括ったのは、お店をカテゴリーで分断したくなかったからなんです。各店舗それぞれの「PACE」を大切にしながら、お互いに関わり合うことで、店舗さん同士で「一緒にこういうことやったらおもしろそう!」みたいな連鎖が生まれるようにしたくて

「私たちは店舗の声をバシバシ受けとめて、実現のためのトライアルアンドエラーを繰り返す。その動きがルクア全体に波及すれば、ルクア大阪そのものを創造する力にも繋がるのではないかと期待しているんです」と熱い想いを語る。
それに対して古川さんは……

古川:出店の決め手もそこなんです。正直、商業施設に入っているテナント同士、そして商業施設さんと各テナントとの関係については、施設がオープンしたらバラバラになるイメージがあった。でも、岡森さんに構想を聞いた時、「ここなら一緒に作り上げていけそう」と感じたんですよね。

「ラルゴを3年、飲食事業自体なら15年やってきて、自分たちの想像以上のものをつくるためには異業種の方と一緒にお仕事する機会が大きな価値をもつと気づきました。なので今回もなにかルクアさんに引き出してもらおうと期待しています(笑)」

パフェの語源はパーフェクト。
心ときめく要素が詰まった食べ物なんです。

ルクア岡森:そもそもの話なんですが、なぜ古川さんはパフェのお店をはじめようと思われたのでしょう?

古川:パフェって、パーフェクトが語源なんです。フルーツが入ってて、アイスクリームが入ってて、さらにケーキの要素もある。上から下へ、味や食感が変わっていくところにストーリーが生まれるのも魅力的ですよね。この店舗では新作をかぶりなしで年間14種類作っていて。パフェグラスひとつにいろいろなアプローチを試みています。

パフェづくりとは、つまりこのグラスにストーリーを宿すこと。

ルクア岡森:今回「PACE」にご出店されるのは、どんなお店になるんでしょう?

古川:パフェテリアの軸はブラさず、あらたにジェラートを追加したいと思っています。ジェラートって素材の良さ、鮮度、季節感が大事で。ラルゴのパフェで大切にしている部分に通ずることがあるかなと。

素材を作る人から大事にしたいと話す古川さん。
「僕の実家が農家なんです。旬の果物でも販路を失って『もったいない』と思う場面に遭遇することが多くて。農家さんと手を組むことで、質の高いデザートを提供でき、農家さんにも喜んでもらえると思うんです」

ルクア岡森:お客様も農家さんもラルゴさんも嬉しい、まさに「三方よし」の仕組みですね。手軽に食べられるジェラートは、ちょっとしたお茶の時間にも良さそうです。

最後まで飽きないパフェの秘密は、
独自のテーマ性と緻密なバランス計算。

ここでぐるりと店内を見回した岡森からプチ告白が。
「正直、はじめはラルゴさんのことを『いわゆる“映え”系のお店なのかな?』と思っていて……」。

ルクア岡森:でもお話をおうかがいしてみて、パフェへの思いの深さやこだわりに驚いたんです。失礼なお話ですみません!

古川:いやいや、謝らないでください(笑)。たしかに見栄えもかなり意識して試行錯誤していますよ。見た目って、人に感動や楽しさを与えるうえでとても大切な要素ですから!

ルクア岡森:それだけこだわった新作を、毎月のペースで出しているんですよね。どうやって考えていらっしゃるんですか?

古川大切にしているのは「テーマ性」です。開店当初は、よくある“季節のフルーツ”みたいなことをやっていたんですが、1年回ると同じようなものの繰り返しになっちゃう(笑)。だから、「紅葉」とか「卒業」とか、あえて食べものとは直結しなかったり抽象的だったりするところからインスピレーションを得られたらおもしろいなと。

文学的ともいえるテーマ性抜群のパフェ。こちらは「卒業シーズンの期待と不安」という淡いイメージから作成。
ワードから連想される色などから仕上がりのイメージを膨らませて作っているそう。
コラボ企画も積極的に行う。
昨年末にはお客様からの要望で「タイの顔面国宝」と呼ばれる人気俳優さんの誕生日イベントを開催。
「イメージカラーや好きなものを伺い、彼をイメージしたパフェを作りました。1日100人ぐらい、ファンの方が来てくださいましたね」。

古川:他にも有名漫画のキャラクターである某兵長の誕生日を祝う企画や、学校を卒業するのでそれにちなんだパフェといったリクエストもありました。お題を与えられることが好きなんですよ。新しいアイデアが湧きますし、「絶対に応えたい!」となって燃えちゃいますね(笑)。

テーマ性のあるパフェに盛り上がる一同。しかし古川さんから「でも、どんなに見た目で感動しても、パフェを食べてると途中で飽きちゃうことってありません?」と質問が。
思い当たる節があるふたり。「う、確かにパフェを食べ終わる前に飽きちゃうことって結構あるかもしれません……」。

古川:パフェって糖分と脂質が多いので、全体のバランスを計算して作らないとしんどくなるんですよ。

ルクア岡森:「最後の方、もういいわ~」となるとテンションが下がってしまいますよね。もったいないし、悪いことしているな~と。

古川:わかります、わかります。でも逆に「もうちょっと食べたいな」で終われるのがラルゴのパフェなんです。

「開店した頃は、お客様が残された状態で帰っていかれることが何度かあって」と振り返る。

古川:抹茶とかチョコとか、ひたすら重たかったんですね。そこからそのために生クリームの空気量を見直したり、食感が途中で変わる様にしたり。「最後まで飽きないパフェ」をひたすら研究しました。

ルクア岡森:アイデアを実行に移されるまでもかなりスピーディーですよね。

古川:お店をやっていると想定外の出来事って必ずあるんですね。それにお客様のリアルな声や要望も実際に接してみなければわからない。もちろん、それらに対応しないという選択肢もあるとは思うんですが、お客様にとっては良いことではないので、どれだけ柔軟かつ迅速に対応するかが大切かなと。

「心地良いペースを感じる時は?」と聞かれ、「いろいろなお店をリサーチすること。お客様と同じ目線に立ちたくて。その時の気づきを、自分たちの店に生かしていきたいと思っています」と答えるところにも、お客様を楽しませることへの情熱がにじむ。

「深夜パフェ」に「10秒パフェ」。
枠をはみ出すアイデアもどんどん実現したい。

ルクア岡森:過去にはひとつのフルーツをいろいろな仕立てで展開するコース料理を出されていたりとか。

古川:「デクリネゾン」ですね。実験好きと言いますか、とにかくいろいろと考えてやってみるのが好きなんですよね。根底には、うちでしか食べれないことの価値をもっと掘り下げたいという気持ちがあります。

「PACEでオープンするお店でもそのための取り組みをひとつ予定していて」と手元をゴソゴソ。
出てきたのは、1枚のパンフレット。

古川:たとえば新店では、より生乳に近い風味を味わっていただけるようにノンホモ牛乳を使うことにしているんです。24時間放牧飼いで品種改良されていないブラウンスイス種の牛からとれる「木次地乳業」さんの山地酪農牛乳を使わせてもらえることになりました。牛乳本来のうまみを楽しんでいただけたら!

古川さんのエネルギーに誘われるように、ルクアサイドからも「PACE」の新店についてアイデアが。

ルクア岡森他のテナントさんとの化学反応もおもしろいものになりそうですよね! コーヒーショップの「パスファインダー」さんとのコラボとか、ビジュアル面でのコラボとして、「スパイラルマーケット」さんで展示されるアート作品にちなんだパフェを作るとかもできそう!

古川:パフェと一緒に特別感もお届けできたら。前例がないことでも「無理かも」から入らず、常識の枠を広げていきたいですね。ルクアさんと力を合わせていけたら嬉しいです!

ルクア岡森:パフェを食べるだけでも1日の目的や楽しみになりますよね。スケジュール帳に書きたくなるというか(笑)。

古川ラルゴでは夜パフェを楽しむ方も多いんですよ。夜営業は20時から満席になります。

「夜パフェ」の背徳感のある響きに盛り上がる一同。

ルクア岡森:ルクアは通常ですと20時半に閉店予定なんですが、たとえば夜にイベントをやりたい時にはラルゴさんだけ開ける、みたいなこともありですね。

古川:1日限定で、夜2時まで完全予約でやりますとか。深夜用のメニューを考えるのも楽しそうです。

議論は続き、「予約制で一斉にスタートとするなら、めちゃくちゃ賞味期限短いパフェとかもおもしろいかも」といったアイデアも。

古川:10秒で食べないと食感が変わってしまうパフェとか。パフェって水分量が多い素材は敬遠されがちなんですが、そこをあえてOKにしたら、アプローチの幅も広がりそうです。

ルクア岡森:そこにルクアも柔軟に応えていくつもりですので、これからもぜひ勉強させてください!

ルクア大阪・寅屋敷のインタビュー後記:
「お客様に提供するなら完璧なものにしたいから“パーフェクト”が語源のパフェを作ろう!」という想いからパフェを始めたお茶目な古川社長。よりお客様に美味しく食べてもらうために日々研究されていて、試行錯誤された話を聞いているうちに、パフェがすごく食べたくなってきて、インタビュー後すぐにパフェを食べに行っちゃいました。今回のインタビューでもたくさん新しい企画、アイディアが生まれましたし、周りの店舗さんとのコラボ企画も前向きに検討されているとのことで、今後コラボ企画も始動するかも!乞うご期待!
なんと、ルクア大阪店のために、新しいジェラートの開発も進めているそうで、ジェラートのテイクアウトもぜひお楽しみに。

Edit:Kawai Fuyuho
Photo:Watanabe Yoshiko
Text:Hirata Yufuko
Edit Support:Minami Ayumi・Kubota Leia

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